代表コラム

2024.04.25

<コラム>【一蓮托生】Vol.44 食の安全性向上に向けて

今回は宿泊施設における食の安全について触れていきたい。
昨今、紅麹サプリによる健康被害が報告されているが、やはり不特定多数の方に提供し、かつ口に入れるもの(食事等)は特に細心の注意を払わなければならない。

 

ホテル旅館も例外ではなく、食事提供においても安全基準をどう担保するかが大切である。

 

現在の地方のホテル旅館に多くみられる事象として、

 

① 個人経営のホテル旅館が全体の80%以上を占めている。(家業が中心)
② 料理の安全基準は、調理場(各施設の調理長)任せになっている。
③ 仕入れ業者の選定も調理場の一存で決まるケースが大半である。(鮮魚などの仕入れは注意が必要)
④ 外部の監視体制が脆弱である。(組合主導の検便や保健所検査程度)
⑤ 食中毒に関するBCPが構築されていない。

 

結論、現在の地方のホテル旅館の大半(80%以上)は、料理長個人の裁量に依存してしまっている点がリスクと考える。

 

当然調理長は食品衛生安全基準(調理師免許等)を保持しているが、外部視点が欠落している可能性が高い。また料理長が変わると、ルール自体も踏襲(継承)されることが希薄となることも多く、俗人化してしまっている。

 

特に個人経営のホテル旅館にはぜひ以下の取り組みを推奨したい。

 

◆厚労省基準のHASCCPの遵守

厚労省が2020年に義務化したHACCCPである。
製造・加工・調理・販売の過程においてHASCCPの基準を設定し、食の安全性を高める取り組みであるが、この遵守は意外と軽視されている傾向がある。

 

<参考厚生労働省/HASCCPの義務化>
HACCP(ハサップ)|厚生労働省

 

◆外部機関(検査機関)の活用
当社も10年前から導入しているが、外部機関による調理場衛生管理チェックである。

当該機関は、依頼先の料理場などの衛生管理全般を請け負う民間企業である。

 

毎月1回の調理場の検便、定期的な調理場内の細菌検査(実査)、セミナー等による啓蒙教育など専門家が幅広くサポートしてくれる。また万一、利用個客からの腹痛等の申し出に対しても、決して隠蔽することなく、顧客の安全をすべての最優先事項として初動対応などのアドバイスをしてくれる点も意義が大きい。
施設側は食中毒の可能性があった場合、性善説で考えたくなるが、ここは性悪説で考えることが必要である。

 

このようにこれだけの業務を担って頂くので相応のコストは掛かるが、顧客の生命には代えがたい。

 

<民間検査機関(町田衛生研究所)>
食品衛生の管理なら 株式会社町田予防衛生研究所

 

個人経営が多い同業界において、業界全体としての発展のためには、すべての機能の内製化にこだわるのではなく、課題や弱みのある分野は積極的にアウトソーシングを活用すべきである。

 

当然このような外部の視点は、調理長からすると面倒に思え、また重箱の隅をつつかれるような印象をもってしまうが、経営者(支配人など)がこの摩擦を恐れてはいけない。

 

優先すべきは、調理長の顔色ではなく、顧客の安全基準の向上である。

また当社も例外ではないが、考えられる対策を講じても事故は起こってしまう可能性がある。しかし、大切なことは初動対応と顧客の生命を最優先すること。

その次に起こった事故の原因を冷静に分析し、仕組やルールを策定することと考える。

 

多くの経営者は顧客の目に見える外見ばかりに資金を投じるが、残念ながらそのような経営判断をしていては、持続可能な旅館経営は不可能である。

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
世界に誇る観光都市 京都 
(生まれは舞鶴市)
兄弟 
3人兄弟(末っ子)
現職 
当社代表取締役 兼 親会社/
事業管掌役員
趣味 
ゴルフ、読書、体幹トレーニング
(ピラティス等)他
特技 
早寝早起き
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる