代表コラム
2025.10.30
<コラム>【一蓮托生】Vol.81 サスティナブル・ツーリズムの動向と今後の可能性③
国内においてサスティナブルツーリズムをさらに普及させるためには、地方の自主自立が不可欠である。これまでの中央集権への期待と依存ではなく、地域特性を生かしたPRこそが我が国の観光立国の成長因子ではないかと考えている。
そのテーマのひとつとして、サスティナブルツーリズム(持続可能な観光領域)にフォーカスし地方の観光の伸びしろや重点課題を整理してみたい。
1. 観光資源を活用したツーリズムの推進
地方では、自然環境や地域文化を守りながら観光を推進する動きが加速。前号で紹介した官民一体の取り組みなど、観光資源を活用したツーリズムはとても伸びしろが大きい。さらには地産地消など地域の特産品の消費やPRなど、地域経済への貢献が重要と考える。
2. DXの推進とSNS等のPR戦略
DXを活用したホテルオペレーションや、無人化の仕組み、さらにはSNSでのPR戦略など、インバウンドに対するソーシャルメディアを活用した取り組みが急務である。テクノロジーの活用が地方観光の魅力を広める可能性がある一方、民間事業者の高齢化、DXやSNSへのリテラシー不足がその阻害要因となっている可能性がある。
3. インバウンド観光の地方への波及
コロナ後のインバウンド回復に向けて、地方への誘客が注目されながらも現時点では東京を中心とする都市部に集中しており、地方への波及には課題がある。受け入れる地方も多言語化、地方空港など交通アクセスの整備、体験型プログラムの開発やPRなども推進していかなければ地方におけるインバウンド需要の拡大は限定的となってしまう。
4. 住民との共生と地域の発展
観光を「地域づくり」の一環として捉える動きが出てきており、当社が島根県津和野町で推進している「地方創生モデル」においても、観光協会との定期的なMTG、観光資源を活用したツーリズム、空き家を活用した古民家再生などにも取り組んでいる。一方以下の「5.地方創生との連携」とも関連するが、観光振興を通じた地方定住者の増加は大きな課題である。
5. 地方創生との連携
観光は地方創生の重要な国家の課題であり、若者や移住者の呼び込み、観光を通じた雇用創出、地域ブランドの確立など今後の地方創生は民間事業者からの発展が期待される。しかしながら地方においては、観光協会、旅館組合、温泉組合など地方観光特有の組合が存在する。この組合の変化なくして地方創生は進まない。
これら重点課題を解決するには、細かな課題やボトルネックが多いのも実情である。
例えば、ホテル旅館の経営層の高齢化もその一因だと捉えている。
これはいわば事業承継の受け皿がなくなってきている点にある。
旅館経営者の平均年齢について、厚生労働省の調査によると、
• 60〜69歳:36.5%(最も多い層)
• 70歳以上:25.9%
• 50〜59歳:18.6%
つまり、60歳以上が全体の約62%を占めており、高齢化が大きな課題となっている。
この背景には、旅館が家族経営や個人経営であることが多く、事業承継が進みにくいという問題がある。後継者不足も深刻で、国や自治体が支援策を講じている状況である。
このような実態を踏まえ、上記5つの重点課題の解決を図るための具体策なども考察していきたい。
(生まれは舞鶴市)
他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる
