代表コラム
2026.01.22
<コラム>【一蓮托生】Vol.86 地政学リスクから見る観光産業の未来予想図④
先日、日本経済新聞で昨年の訪日客の流入者数が史上初4,000万人を超えたとの記事を目にした。
さらに消費額は9.5兆円、国内総生産(GDP)比では3%の規模に成長とのことである。
このデータからもわかるように、観光市場は既に日本の基幹産業に成長しつつある。
中国の渡航規制など短期的な需要減退はこれからもあるだろうが、中長期で見た場合、
右肩上がりの成長は疑う余地もない。
そのトレンドを踏まえ、分散型ホテルの可能性についてもう少し深堀りしてみたい。
過去10年で年平均80か所以上のホテル旅館が廃業に追い込まれている。
一方、海外からの旅行客は右肩上がりに増え、その流れは今後も地方に波及すると見られている。
このギャップを埋める手段は2つ。
1つ目は、新築でホテルや旅館を建てる。
2つ目は、今ある資産=施設を活用する。
大別すると、大手は新築主義、新規参入は中古を活用する傾向がある。
(尚、当社は上場企業ながら中古市場の活性化を推進しており例外)
分散型ホテルの基本思想はあくまで後者、今ある資産を活かす、である。
その上で、①安全性の担保と②付加価値について触れてみると、
まず民家をホテルに改修する場合の安全性の担保(①)については、
1. 建築確認、検査済証が存在するかを確認する
2. その上で、耐震基準を確認(新耐震基準の建物or旧耐震基準の建物)
3. 旧耐震の場合、補強工事などが必要な場合があるためエンジニアリングレポート(以下ER)の取得は必須
この3点は最低限担保しておく必要がある。
さらに緊急対応として、非常通報装置の設置、火災発生から3分以内に現地に急行できる体制など運営者側にも大きな責務がある。
現在の旅館業法も通常の旅館業とは別に、簡易宿泊営業、民泊営業の合計3つの種別があるが、
後者2つ(特に民泊営業)は規制が緩いため利用者側の認識も必要である。
個人的に言えば民泊新法による営業許可は規制を強めることが急務である。
話を戻すと、これら3つの安全性を確保できない場合が今回の論点である。
昭和50年代以前の建物は検査済証の取得は義務化されておらず、
もし検査済証のない建物をホテル営業に変換する場合、ER鑑定の上、是正工事を施す必要がある。
ところが意外とこの工程を怠っているケースが散見される。
理由としては、ER鑑定にお金がかかる点と、ERによって出た是正箇所の改修工事に多大な費用を要するケースがあるからである。
スタートアップの企業は、資金面に限界があるため、寝た子を起こさぬようこの工程を行わないケースが多く見受けられる。
それでも旅館営業ができてしまうところに大きな落とし穴がある。保健所はこの耐震部分を許可の基準においていない。
さらに消防も民泊となれば規制は極めて緩い。
そして、徒歩圏に人を配置しない分散型ホテルはある意味とても危険である。
(昨年の赤坂のサウナ事故も事実上無人化が原因でもあるように)
さらに②の付加価値についてであるが、建物を貸すという考え方で言えば特段大きな障害はないだろうが、
慣れていない建物での宿泊、慣れていない土地での宿泊は、特に高齢者などは緊急事態において極めて脆弱である。
・建物の耐震(災害への備え)
・緊急時の体制(有人化など)
・地域一体型の施設共有(フロント、ラウンジ、レストラン、大浴場)
これらが整えば、今後国内においては分散型ホテルが拡大し、さらに空き家を含めた地域活性化につながると期待する。
地域に観光客が増えれば地産のものが消費されるなど地域経済へのプラスの効果も図りしれない。
今後も私たちは「あるものを活かす」という基本理念をもって観光産業の活性化に努めていきたい。
(生まれは舞鶴市)
他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる
