代表コラム

2026.09.17

<コラム>【一蓮托生】Vol.97 エルニーニョ現象が観光に与える影響 ―天候不順の先にある回復シナリオ―

今年の夏、各地の観光地から「今年は雨に泣かされている」という声を数多く耳にした。
長雨が続いたかと思えば、突然の猛暑がぶり返す。(予想不可避な豪雨も珍しくなくなった。)
さらに、今年は海開きの延期や多数の花火大会は中止に追い込まれていた。
9月の晴天率も平年の16%というデータがあるが、この数値を見ても今年の天候がいかに異常であるかを物語っている。

こうした天候の乱高下の背景の一つとして、気象庁をはじめ各機関が指摘しているのがエルニーニョ現象と言われている。

 

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の海水温が平年より高くなることで、日本を含む世界各地の気候パターンが大きく揺さぶられる現象である。観光という「天候に左右されやすい産業」にとって、この現象がもたらす影響は大きい。

 

 

◆天候不順がもたらす売上減少と運営体制の構築の難しさ
実際、当社が支援先の宿泊・観光事業者から集約したデータを見ても、夏季の宿泊稼働率は平年比で二桁ポイントの落ち込みを記録し、海洋・野外体験型のアクティビティ売上は三割近く減少した地域もあった。冬季についても暖冬傾向によりスキー場などウインターレジャー関連の売上が伸び悩むなど、季節を問わず影響が及んでいる。

 

特に深刻なのは、単発の悪天候ではなく「予測が難しい不安定さ」そのものが消費者の予約行動を萎縮させている点だ。数日先の天気すら読みにくい状況では、宿泊予約やアクティビティ予約が直前まで確定せず、事業者側の稼働計画やスタッフ配置にも大きな負担がかかる。売上減少は単なる一過性の数字ではなく、経営の予見可能性そのものを揺るがしている。

こうした影響の構造を整理すると、大きく4つの側面に分けられる。

 

 

◆観光業が受ける4つの影響
需要側:荒天報道や渡航警戒情報により、旅行そのものを控える・延期する動きが拡大

供給側:野外イベントの中止・順延、稼働率低下によるコスト吸収力の低下
キャッシュフロー:直前キャンセルの増加による資金繰りの不安定化
人材面:繁閑差の拡大により、季節雇用スタッフの確保・維持が困難に

 

 

◆回復に向けた対策の考察
こうした構造を踏まえると、回復への道筋は「天候リスクを前提に組み込んだ事業設計」への転換にあると考える。以下、三つのシナリオを提案したい。

 

対策① 需要の平準化と天候連動型プライシング
天候予測と連動した料金・キャンセルポリシーを導入し、荒天時の需要減を晴天時・室内型コンテンツのPRへ誘導する。屋内体験や温浴施設(日帰り温泉)など「悪天候に強い」商品ラインナップを併設することで、稼働の谷を埋める。

 

対策② インバウンド・国内需要のポートフォリオ分散
特定の季節・特定の市場(国・地域)への依存度を下げ、通年型・複数市場型の集客構造を構築する。インバウンド需要は、天候の影響を受けづらい(既に渡航が決まっているケースが大半)ため、海外需要の一定取り込みができればそのリスクは分散でき、天候変動に対する耐性を高めことが可能。

 

対策③ データに基づく早期警戒と代替オペレーション
気象データと自社の予約・稼働データを組み合わせた早期警戒の仕組みを整え、悪天候が見込まれる際の代替プラン(屋内振替、日程変更の柔軟化、地域内送客の連携)をあらかじめ用意しておく。これにより、直前キャンセルによる機会損失を最小化できる。

 

 

エルニーニョ現象そのものは自然現象であり、私たちがコントロールできるものではない。しかし、その影響をどう受け止め、どう備えるかはそれぞれの事業者の工夫次第である。

天候不順を「一時的な逆風」として耐え忍ぶだけでなく、事業構造そのものを見直す契機と捉えることができれば、次の回復局面ではより強靭な観光ビジネスへと生まれ変わることができるはずだ。来月から九州復興割など大きな起爆剤となり得る施策も予定されている。

今後も地域の観光事業者の皆様とともに、自然現象に一喜一憂せず、事象→変化のチャンスと捉え日々進化していきたい。

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
京都府
(生まれは舞鶴市)
趣味 
ゴルフ、RUN、読書、ピラティス
 他
特技・特徴
早寝早起き ・ 体の柔軟性
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる