代表コラム
2026.10.15
<コラム>【一蓮托生】Vol.98 「都市部の一極集中」は崩れるか?インバウンドの主戦場は都市部から地方へ遷移するのか?
2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人と、初めて4,000万人を突破し過去最高を更新した。消費額も9兆4,559億円で過去最高である。数字だけを見れば、日本の観光は完全に「新しい時代」に入ったと言える。 ただ、私が注目しているのは総数ではなく「どこに泊まっているのか」という中身だ。地方観光の側から見ると、この5年間は期待と失望が交錯した期間でもあった。
■5年間で何が起きたか 都市集中から、地方のキャッチアップへ
まず前提として、2021〜22年はコロナの水際対策でほぼ比較にならない。実質的な比較は、コロナ前の2019年を基準にした2023年以降になる。外国人延べ宿泊者数の「三大都市圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・京都・大阪・兵庫)と地方部」の構図は次のとおりだ。
(出典:https://yamatogokoro.jp/inbound_data/53970/)

2019年の62.7%から2023年には72.1%へ、三大都市圏への集中が進んだ。
流れが変わったのは2024年以降である。
2024年は三大都市圏が69.1%、地方部が30.9%だった。
2025年は三大都市圏が前年比からさらに下降したのに対し、地方部は上昇傾向となった。
2026年に入ると、訪日客全体の宿泊数は前年割れの月が増えたが、それでもほぼ前年並みで推移し地方の比率は上がり続けている。
■なぜ地方が伸びたのかの考察
要因は大きく4つあると考える。
一つ目は、
「航空路線の拡充」だ。2025年の伸び率で首位に立った鳥取県では、米子空港のソウル便再開・増便や台湾便の拡大が追い風になった。東北でも、仙台空港への直行便就航が、香港やタイからの宿泊者を押し上げている。空港に国際線が飛ぶかどうかが、地方の命運を分けつつある。
二つ目は、
「リピーターの増加」である。JTBは、訪日客全体の伸びが鈍化する一方、地方訪問率の高いリピーターの構成比が上がることで、2026年は地方訪問が再び加速すると予測していた。東京・京都・大阪を一巡した人が、次は「まだ知らない日本」を求めて動く。この流れは今のところ予測どおりに進んでいる。
三つ目は、
「客層の多様化」だ。中国市場は2025年11月以降、訪日客数・宿泊者数とも減少傾向に転じた。一方で米国は2019年比で2.3倍以上になった。欧米豪の旅行者は滞在が長く、体験や自然、文化への関心が高いく地方との相性は良い傾向にある。
四つ目は、
「コンテンツと発信」である。鳥取では「名探偵コナン」の聖地として知られる青山剛昌ふるさと館に、海外からの来館者も増えている。SNSや動画で、観光協会が想定しなかった場所が突然脚光を浴びる。いまの地方誘客では、これが最も読みにくく、かつ最も面白い要因でもある。
■人気エリアと、今後注目のエリア
とはいえ、地方全体が潤っているわけではない。外国人延べ宿泊者数の69.7%は、東京・大阪・京都・北海道・沖縄の5エリアに集中している。また、訪日客の行動データで上位100地点を見ると、25県は1地点もランクインしていないという。地方の中でも二極化が起きている。
すでに実績を出しているのは、まず北海道と沖縄だ。2025年は3割前後の大きな伸びを記録した。それに続く伸び率の県も、鳥取(+72.0%)、新潟(+60.6%)、三重(+57.7%)、富山(+54.5%)と、従来は上位に名前の出なかった地域が並ぶ。
今後注目しているのは次のエリアだ。
• 東北・北関東:東北6県の2025年の外国人延べ宿泊者数は257.2万人泊で、前年比123.5%と全国平均を上回った。2026年も青森県や茨城県などで4割を超える伸び、7月は福島県が73.1%増で全国トップだった。
• 四国・山陰:JTBの予測では四国を訪れる米国人旅行者の予約が前年比240%増とされた。山陰はインバウンド比率が低く、これから発見される余地が大きい。
■地方の観光施設が抱える課題
訪日客の関心は高まっているが、受け入れ側の事情は厳しい。現場の課題を整理すると、次の点に集約される。
第一に、
「人手不足」だ。日本旅行業協会(JATA)の調査でも、インバウンド受け入れの課題は依然として人材不足が最上位だった。自治体やDMOを対象にした調査でも、約7割が「受け入れ整備」、65.5%が「人手不足」を課題に挙げている。 また、観光従事者だけでなく。地方の人口減少の最大懸念である東北の人口は2030年に約5%、2035年には約14%減る見通しだ。需要が増えても、迎える側が圧倒的に不足するリスクがさらに顕在化してくることが予想される。
第二に、
「二次交通」である。観光現場からは「最寄り駅といっても駅前にタクシーがないところだらけ」という声が上がる。空港や新幹線駅まで来てもらっても、そこから先の足がなければ、旅行者は行き先を諦める。 →ここは早期にライドシェアなどの規制緩和は必須である。
第三に、
「情報とサービスの多言語化・キャッシュレス化」だ。時刻表や運賃、予約手段が日本語だけでは、個人旅行が中心の欧米豪客にとって、そもそも選択肢に入らない。決済の面でも、地方ではキャッシュレス対応が遅れている場合が多いと指摘されている。
第四に、
「単価と滞在日数」である。日本銀行金沢支店のレポートでは、北陸は消費額や平均宿泊日数が全国平均より低く、名産品などの認知度も低いと分析する。来てもらうだけでなく、「泊まって使ってもらう」設計が要る。
■「数」から「質」へ 地方に求められること
地方分散が進んだといっても、その実体は「都市の混雑を地方が肩代わりする」段階を出ていない。私は、これからの地方観光に必要なのは、全員に来てもらうことではないと考えている。自地域の強みと相性の良い市場を見極め、そこに絞って磨くことだ。
具体的には、次の三点が鍵になる。
1. 路線と交通を「商品」として設計する:空港・駅からの二次交通を、予約可能な体験とセットで見せる。
2. 体験の高付加価値化:温泉、祭り、自然、食、を滞在日数を延ばす形で組み立てる。
3. 住民の暮らしと両立させる:マナーや物価への不安を放置したままでは、地域の支持を得られない。
最後に、
今月当社グループは岩手県雫石町で旅館を引き継いだ。この旅館は「赤い風車」という名前で営業されており、宿泊のみならず温泉や岩盤浴など日帰り対応もしており、地域の皆様に愛されてきた施設である。同施設は地元の銀行から相談を受け、難易度は高いことは承知していたが、東北の復興は私の悲願でもあり、当該案件がその足掛かりになればと支援を決定した。
<ゆとりろ雫石>
【公式】ゆとりろ雫石 | 愛犬と、自分と、雫石がととのう
今後人口減少が懸念される東北エリアにこそ、観光需要を喚起し、インバウンドへのリーチを強め安定的に観光産業の育成を進めていく考えである。
世の中の困り事を先回りし、その困り事を事業化してきたのがリログループの基本思想である。
今後も地方活性化の1つの戦略として、地方へのインバウンドの取り込みを加速していきたい。
(生まれは舞鶴市)
他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる
