代表コラム
2022.12.22
<コラム>【一蓮托生】Vol.11 ホテル運営形態の特徴と今後の見通し
<ホテル運営形態の特徴と今後の見通し>
ホテル運営には大きく区分して4つの形態がある。
[ホテル運営形態]
◆所有運営(不動産所有者と運営母体が同一)
◆賃貸借(不動産所有者と運営母体が別。さらに所有者へのフィー支払いは一定)
◆運営受託(不動産所有者と運営母体が別。さらに所有者へのフィーの支払いは実績に応じて)
◆コンサルティング(課題抽出や助言、BPO)
戦後のホテル旅館運営と言えば、地元の名士が、地域貢献の一環でホテルや旅館を始めたケースが多く、ほとんどのケースが自社所有に当てはまった。しかしながら所有者の事業承継問題、経営悪化、不動産投資市場の開始などにより、この20年で運営形態は多様化していった。
[賃貸借と運営受託の違い]
特に混同されやすいのが賃貸借と運営受託です。
賃貸借の場合、所有者は基本運営には介在せず一定の賃料を受け取る。ただ経営の悪化は資産価値を低減させてしまうため、経営状況を監視する必要がある。
運営受託は、一般的にはプロフィットシェア(利益シェア)を行い、手残り利益を所有者と運営者で分配する。この割合はケースバイケースなので、一概に言えないが、運営者が赤字負担をするか否かによっても大きく変わる。当社も12箇所程度の運営受託を行っているが、ほとんどのケースが、当社が過去所有していたホテル旅館を投資家から請け負うケースである。この場合はある一定期間お譲りした経緯もあるので、責任を持って運営を行うが、その後は是々非々の関係であるべきである。
具体的に補足すると当社は他の運営会社と違い、資金力も有しており自ら投資家ともなれる。
しかしながら、決して単独の新築を行わないというポリシーを持っている。
一方コンサル上がりの個人が、あたかもプロのホテルコンサルタントのごとく、運営受託者となるケースには注意が必要であろう。ホテル運営の経験もないコンサルが多数派なので注意が必要だ。
ホテル業を検討されている方や、既に運営されている方には、上記事項も踏まえ慎重にご検討をいただきたい。
[今後の見通し]
今年最後のコラムということで、今後の同業界の見通しについても触れておきたい。
現在の国内の観光市場は、行動制限からの反動需要や政府支援策に端を発し、大幅な需要増加となっているが、これはあくまでカンフル剤である。この一時的なカンフル剤が終了した後の観光市場について、今後の展望を簡単にまとめてみたい。
◆運営受託者が減少(運営受託等の担い手不在)
主要因は、人財確保難、原価高騰、大手は自前で取得運営に走る。我々でさえ、簡単には受託しない(できない)
◆コロナ期間中の融資の元本返済(資金難の波が押し寄せる) →倒産、廃業等が増加
コロナ期間中に追加融資を受けたホテル旅館は相当数あるが、コロナ期間中は金利のみの負担であったものが、今年度から原本返済が開始となる。
◆「新築」傾斜に拍車
資金力がある企業や、投資家と組んでいるオペレーターは挙って新築に走る。結果地方の中小型ホテル旅館への支援が波及せず、運営経験の無いコンサルなるものの事業領域が拡大する。
◆事業承継問題の深刻化
ホテル旅館経営者の高齢化は避けて通れない、業界としても課題である。同族経営の限界からくる、非常に大きな社会問題となる可能性。
最後に
観光立国を目指す日本。しかしながら上記記載のように、担い手不足、事業承継、ノウハウ不足、高齢化など様々な課題を抱えていることを多くの方に知ってほしい。
今後地方のホテル旅館が生き残る道は、
- DXを通じ生産性を高める
- 運営実績のある会社からノウハウを享受する(BPO含む)
- 大規模投資も含めリブランドを図る
お困りのホテル旅館の経営者の方は、現状の問題点など整理されたうえで、賢明なご判断をされることを期待しております。
次回は、ホテルの生産性向上について触れて参ります。
(生まれは舞鶴市)
事業管掌役員
(ピラティス等)他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる