代表コラム

2023.08.03

<コラム>【一蓮托生】Vol.26 金利上昇局面がもたらす潜在的リスクと可能性①

金利上昇局面がもたらす潜在的リスクと可能性①

7月下旬 日銀は長期金利上限0.5%を弾力化するため、上限設定の撤廃を発表した。
これらが観光業に与える影響を考えてみたい。

 

<想定シナリオ>
世界基準に反し、円安基調が続いている
→円安抑制の為、国内の長期金利0.5%の上限撤廃
→金融機関からの貸付金利の上昇(段階的に)
→借入依存の多い中小のホテル旅館の金利負担増
→新規バリューアップ投資の停止(競争力低下)
→設備投資遅延(クオリティ低下、安全性低下)
→支払遅延(取引企業との信頼関係失墜)
→債務超過(事業譲渡、民事再生、破産の増加)

 

考えれば考えるほど金利上昇が観光業全体に与えるダメージは大きい。
先に結論から述べていくと、金利上昇局面で倒産や廃業は右肩上がりになるであろう。

 

特に資金力の乏しい事業者や自己資本率が低く多額の借入金に依存している事業は意外と多く、

それらの事業者にとっては不遇の時代に突入するであろう。

 

<昨今の地方宿泊産業における懸案事項>
◆「ゼロゼロ融資」終了に伴う金利負担、元本返済スタートによる資金悪化(支払遅延が増える)
◆特に人口の少ないエリアの人材確保が困難(地方ほど人手不足が深刻)
◆水道光熱費、各種仕入れ原価の高騰(利益率を圧迫)
◆新規投資や不良箇所等の設備投資への余力がなくなる
◆他社の新築ホテルの供給が増え、競争力低下が深刻化

 

一般的には当該ホテルの土地建物を担保に多額の資金の融資を受けている事業が一般的である。

 

これまで何度か触れてきたが、宿泊産業は参入障壁が低く、いわば誰でも業界に参入できる。さらにこれまでの低金利により金融機関借入がしやすい環境があり、安易に借入依存をしてきた事業者はさらに厳しい時代に突入したと言える。

 

さらに、物価高騰、人材不足により運営収支は悪化の一途を辿っていくことは、火を見るより明らかである。

 

私どものような上場企業は、比較的資金調達が容易であるため、取引業者への支払い遅延、踏み倒しなどは無縁である。また顧客の安全性に関わる投資は即断即決するよう日々啓蒙活動を行っている。
さらに「健康優良企業認定法人」、「年間休日120日」、「7連休×2回」、「男性の育休奨励制度」など、業界的には珍しく取引先企業と比較しても、人材採用にも優位性がある。

 

なぜ当社がこのような労働者に有利な条件を提示できるか?
それは以下の理由によるものである。
① 金融機関からの借り入れが無く、金利の影響を受けづらい
② バックオフィスの一本化により運営コストが抑制できている
③ DX推進により予約からチェックアウトなどの清算業務がなく労働生産性が高い
④ 余計な作業が発生しない分、スタッフは接客に注力できる

 

ざっと列挙してみたが、上記のような理由である。

 

一方で、金融機関からの借入れに依存している事業者は、設備投資やIT投資に資金を回す余裕がない。当社はIT関連投資に年間数億円投じているが、個人経営では事実上不可能と言える。この業界でホテルコンサルなるものが意外と幅を利かせている理由はここに起因している。

 

個人経営者にはとてもつらい金利上昇局面。
この状況をどのように打開すべきか、次号では私見を含めて述べていきたい。

 

<ホテル運営に必要不可欠な要素(上場企業と個人経営との対比)>

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
世界に誇る観光都市 京都 
(生まれは舞鶴市)
兄弟 
3人兄弟(末っ子)
現職 
当社代表取締役 兼 親会社/
事業管掌役員
趣味 
ゴルフ、読書、体幹トレーニング
(ピラティス等)他
特技 
早寝早起き
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる