代表コラム

2023.09.28

<コラム>【一蓮托生】Vol.30 ホテル業界における同族経営と事業承継の糸口②

~ホテル業界における同族経営と事業承継の糸口②~

 

これまで同族経営におけるスタートアップ時の成長スピードの高さ、その後の同族経営にこだわり続ける企業の衰退について触れてきたが、今回はその同族経営がいかに長期的持続力を保持できるか、いくつかの選択肢について提言していきたい。

 

<事業承継の選択肢>
課題のあるホテルの再建から、事業譲渡まで主な選択肢を記載してみる。

 

1. 覆面調査  → 課題抽出ステージ
2. 外部委託(BPO)→ 比較的課題のある部門のみ外部委託 (例集客、予約、建物管理等)
3. 支配人派遣型MC → ノウハウの享受
4. 運営委託型MC → 運営のすべてを外部に委託し、残った利益を双方でシェア
5. 賃貸借 → 運営のすべてを外部に委託し、オーナー側は毎月一定の賃料収入のみを受領
6. 事業譲渡(一部OR全部) → 金融機関対策として保有株式の一部をクライアント企業に売却し、運命共同体としてホテルの再建を加速。また全部を譲渡するケースも可能

 

 

<今後のホテル事業承継の区分>

 

 

<覆面調査>
このスキームは、所謂健康診断に近い。課題を外部視点でスクリーニングしてもらい、課題の洗い出しを行うもの。利点は導入しやすくコストが安価(1件当たり30万程度)一方課題改善の実行に関わる強制力がないため、改革意思のある経営者以外はお勧めできない。

 

<一部外部委託(BPO方式)>
本スキームは、現在困っている部門のみを外注するもの。現在地方の人手不足は深刻で、施設によっては100%稼働が出来ていない状況だ。困っている部分だけを外注できるのは魅力的である。
具体的には、OTA販売業務、予約業務(コールセンター受電)、料理メニューの企画開発など
部分業務を外注することで、強みを伸ばすことが出来る。

 

<運営受託方式>
運営業務全般を外部に委託するもの。指揮命令系統も委託会社に代わるため、現経営者は監視や助言のみを行う。手間が省ける分、恒常的な委託料がかかる点やスタッフに直接指示が出来ない。
オーナーシップが強い経営者には向かないが、後継者不足の場合にはお勧めである。

 

<賃貸借方式>
月額の賃料だけを受け取り、経営には実質関与できない。
課題はオーナーが作りたいホテルを創れなくなり、経営に実質関与できない。
後継者不在の場合や、直ぐには事業譲渡できない場合には適切である。
仮にホテル収支の増減に「賃料+インセンティブ」とする二段階方式も可能である。
また、運営会社の信用度合いにより当該不動産のバリューが変わることにも留意したい。

 

<株式譲渡方式(一部OR全部)>
今回最もお話したいのが、一部の株式譲渡である。
経営が一定以上困難な場合、また金融機関からの追加融資が受けられないケースはこの手法が最も効果的だと考える。全株式を譲渡すると実質経営から身を引くことになるが、25%未満のマイノリティ出資であれば、75%以上の株式を保持し続け、またファイナンス力のある投資家に一部譲渡することで、ノウハウの享受をしつつ、金融機関の支援も受けやすくなる可能性が高い。

 

参考に当社でもこのような事例を既に実施している。

 

タイで展開するココテルにマイノリティ出資(少額出資)のケース

<Koko Global Hospitality>

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2018年に当社がマイノリティ出資をしたことで、当社のノウハウを惜しみなく提供し、その結果、当社以外の投資家からの融資を受けることができた事例である。
その資金をもとに、追加の設備投資や新規開業を増やし業績もV字回復している。
さらに人事交流も行うことで、更なる相乗効果が見込めている好事例と言える。

 

このマイノリティ出資は、困窮する地方のホテル旅館における再生モデルとして、極めて有効だと考える。将来的には自力がつけば譲渡した株式の買戻しを行うことも可能だし、または、バリューを上げた上での残りの株式を売却することでキャピタルゲインを得ることも可能である。

 

現在の地方のホテル旅館は、業績が悪化すると金融機関からの借金返済の圧力が強くなる。その結果一番底値のタイミングで、苦し紛れに会社や不動産を売却せざるを得ない。
これは大変もったいないことである。(本来の価値以下での事業譲渡は避けるべき)

 

株投資も同様だが、いかに価格が高いタイミングで売却できるかが最も重要なことである。

 

当社もこのような手法で、観光を通じた地域活性化を加速させ、自力再建への道筋をつけるところまでお手伝いを行っている。

 

マイノリティ出資等について、話を聞いて見たいなどあれば気軽に、HPからお問い合わせください。必ずお宿様に寄り添ったご提案ができると考えています。

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
世界に誇る観光都市 京都 
(生まれは舞鶴市)
兄弟 
3人兄弟(末っ子)
現職 
当社代表取締役 兼 親会社/
事業管掌役員
趣味 
ゴルフ、読書、体幹トレーニング
(ピラティス等)他
特技 
早寝早起き
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる