代表コラム
2023.10.12
<コラム>【一蓮托生】Vol.31 旅館ホテルのDXへの課題① ~歴史的背景が蔓延る旧態依然の業態~
旅館ホテルのDXへの課題① ~歴史的背景が蔓延る旧態依然の業態~
ホテル旅館業界は、50年間ほぼ生産性が変わっていないといわれて久しい。
この打開に向け、当社IT戦略チームを中心に4年前よりオペレーションのIT開発を推進してきた。
予約の導線、チェックインの面倒な手続きの簡素化、滞在中の各種手配、館内インフォなどが各自のスマホですべて完結できてしまうものである。また清算業務においても、数年前に今では導入するホテルや旅館は皆無の大きな自動精算機が流行ったが、私たちは各自のスマートフォン上で決済が完了できる仕組を採用し導入を順次進めている。
一方、最も苦戦したのがシステムの導入段階であった。
先月から大多数の施設への導入を進めたが、ここに面白い結果がでた。
スムーズに導入できた施設と全く導入が進まない施設が二極化している。
導入がスムーズに進み、CSが格段に向上した施設もあれば、お客様目線でないという極めて身勝手な発想で、その導入を阻害する抵抗勢力もわずかながらあった。
ここが意味するものは何なのか?
既にあるサービスを売りにする高単価宿(50,000円以上)の場合、完全なデジタルへの移行は適さない側面もある。しかしながら単価30,000円以下の宿泊施設の場合、ハイブリッド型であっても利便性向上を進めることがCSにつながることは言うまでもない。
人を介した手続き(チェックイン、チェックアウト系の作業)をCSや接客と限定してしまっている大変残念な事例である。
現に20代の若手でさえ、このような拒否反応が一部で起きてしまっている。そして会社と考え方が違うと言い、退職の道を選ぶものも極めてわずかながらいる。
思想を伝えきれていない経営側にも課題があるが、極稀なこの拒否反応をスルーすべきか考えたが、ここにホテル旅館の本質と体質が見え隠れしているのではないだろうか?
1つの事例ではあるが、
私の息子は飲食店でアルバイトをしている。予定よりも早く帰宅することや、予定よりも遅く帰宅することも頻繁にある。「今日早いね!」と聞くと「お客さんが少ないからね」。本人は普段通りの反応で特段ネガティブな印象はない。当然予定よりも遅くなることも多々ある。このシフト調整は、チェーン店や都市部では当たり前のことである。
一方、地方のホテル旅館ではこの考え方に批判的な考えも意外と根深い。
「アルバイトさんに多く働かせたい」「派遣さんの時間を確保してあげたい」などお客様が少ない日や時間帯にも繁忙期と同様の人的シフトを組む。まさに本末転倒であるが、当社のような企業でさえ、この有り様であることを鑑みると、生産性が全く変わっていないこの業界の根深い慣習があるのは間違いない。ホテルも人間の体と同じで必要以上の皮下脂肪の蓄えや、不摂生な生活習慣、日々のメンテナンス不足を続けると、ホテルも同様に間違いなく債務超過で倒産していく。
私はこの事例をいやというほど目の当たりにしてきた。
ホテル旅館の始まりは、家族経営と使用人との主従関係である。
ある意味、そのホテル旅館が倒産しようと使用人には関係ない。他のホテルに移れば良いからである。(当事者意識がない)
お客様を盾に、できない理由を並べ、また抵抗勢力として反対派に回ることで自身のアイデンティティ保とうとする側面もある。
また相対的な比較ではあるが、
20代中心の施設は非常にスムーズに導入が進んだが、そうではない施設は、調子が悪いだの、お客様のクレームが多いだの、出来ない理由のオンパレードである。
確かにデジタル慣れしている若年層と、そうでない中高年ではある程度差があるのは仕方ないが、当初は、お客様側の不慣れの解消が課題だと思っていたが、ここまで導入施設側での抵抗勢力があるとは想像が出来ていなかった。(お客様の方が圧倒的に使いこなせている。)
既に先行導入している施設では、チェックイン作業が半分以上削減できた。これまでかかっていた労力をレストラン等に配置転換しCS向上に寄与させ、社員の休日を増やし、また労働時間の低減にも寄与できている。メリットしかない仕組みも地方での導入は思うように進まない。
これから10年間で日本の人口構造は劇的に変化する。インフラの整っている都市部に人口は流れ、地方はさらに人口減少を食い止めることはできないであろう。
私たちが掲げる、「日本の魅力は地方にあり」。そして世界の観光立国としてさらに地位を高めるためには、労働生産性向上と顧客重視の運営ができるかに命運はかかっているといっても過言ではない。
次号ではもう少し掘り下げて、ホテル旅館の体質とその改善策にも触れていきたい。
(生まれは舞鶴市)
事業管掌役員
(ピラティス等)他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる