代表コラム

2023.12.07

<コラム>【一蓮托生】Vol.35 地域活性化の糸口➂ ~古民家再生の是非~

地域活性化の糸口➂ ~古民家再生の是非~

 

私たちは地方でホテルや旅館の再生を手掛けているが、唯一これまで対応できていないケースがある。それは「検査済証のない建物」の再建である。

 

特に古民家を宿泊施設化しようとすると、必ずと言ってよいほどこの問題にぶち当たる。

 

千葉県に本社を置く「NIPPONIA」という企業を少し紹介したい。
同社は、主に地方の古民家などの空き家を再生させ、レストランや宿泊施設として提供している。
とても興味深い取り組みだと思う。
地方の空き家問題と観光活性化の2つの課題改善ができる取り組みである。
当社も何度となくこの領域の検討を行ったが、結論はNOである。

 

その理由は、
「建物の順法性が担保されていない」からである

 

地域創生を社会的使命の1つとして事業を展開している当社にとって、なんとも悔しい思いであるが、万一、建物が倒壊した場合の人命に関わるリスクが否定できない以上、事業としての社会的責任を果たすことができない。

 

歴史的背景になるが、

現在では当たり前になっている建物を建てるためには、建築確認申請が必要であり、建物が完成したのち公的機関により、申請通りに建物が建てられたかどうかを確認する検査が必要である。この検査を通過し始めて「検査済証」が発行される。

 

しかしながら昭和40年代以前は、この建築確認申請や検査済証の発行が必須ではなかったため、現存する多くの建物は「検査済証」がないものが意外と多いのが実情である。

 

私たちの業界では、この「検査済証」のない建物は順法性が担保していないと見なされ、事故が起こった場合の責任が極めて重くなり、レピュテーションリスクも排除できない。さらにこの種の不動産を流動化しようとすると、買い先を含めかなり間口が限定されているのが実情である。
一般的なリート投資法人、不動産ファンドではこの領域に参入しない(できない)のはこの為である。

 

この「検査済証」がない建物を現在の法律に適合させるためには、公的な検査機関のチェックや是正が必要となるが、実はこのプロセスが非常に難儀である。なぜなら旧耐震基準で建てられた建物を現行の建築基準法にて適用させるためには、相応の追加投資が必要となり、結果、解体した方がよいという選択が多くなるのが現状である。

 

地方の空き家問題、未利用資産の活用を図り、世界に日本の文化を発信するためには、法整備がどうしても欠かせない。

 

現行の指針では上場企業など社会的責任が重要視される企業が参入できないと市場の広がりは見込めず、結果中小の事業者だけが烏合してしまうとグレーゾーンが増え、結果地方の観光業に悪影響をもたらす可能性すらある。

 

次号では検査済証がない、建物の再建手法を事業者の視点で提言をしていきたい。

 

参考:国土交通省から
検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のガイドライン

 

<NIPPONIA HP>
NIPPONIA

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
世界に誇る観光都市 京都 
(生まれは舞鶴市)
兄弟 
3人兄弟(末っ子)
現職 
当社代表取締役 兼 親会社/
事業管掌役員
趣味 
ゴルフ、読書、体幹トレーニング
(ピラティス等)他
特技 
早寝早起き
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる