代表コラム

2025.07.24

<コラム>【一蓮托生】Vol.75 気候変動と観光産業の未来④

~建物の存続について~

 

温暖化防止と叫ばれ久しいが、トランプ政権によるパリ協定離脱など世界的な温暖化への機運が減退しているように感じるが、昨今の温暖化は将来に深刻な課題となる可能性が高く、カーボンニュートラル社会へ進んでいく必要性を感じている。

 

例えば、現在のヨーロッパは超高温に見舞われ、特にエアコンがないフランスのパリは危険な状態となっている。パリでは築100年超の建物の割合が81%と言われており、その歴史的建造物ゆえ、建物の外にエアコン設置ができないという課題に苛まれている。

 

フランスのように地震が起こらない場所では、築100年以上の建物が大半を占めていると言われているが、逆に日本においては、築年数が50年以上経過している建物は珍しいという違いがある。

 

一方、昨今の箱根や熱海では、森林伐採による新たなホテル建設が多く見受けられ、過剰供給の様相を呈している。果たしてこのような新築主義かつ、民間主導の取り組みで持続可能な観光業が続くのか懸念を持っている。

 

兼ねてから個人的に感じていたことではあるが、日本国内においては、
もっと長期間、建物(ホテル)を継続利用できないものか?と考えている。

 

一般的にホテル業界において、築年数30年というと高齢化施設と言われているほどである。

 

先述の通り、フランスの建物は築100年以上が当たり前で、築年数が新しいだけにフォーカスするのではなく、古き良き建物や街並みにこそ、観光客数世界第1位の観光地としての魅力があると感じている。

 

その点で日本の旅館文化をどう継承するかという視点こそ、今最も大切な価値観ではないだろうか?

 

当社は他社が好まない、中古ホテルを有効活用したビジネスモデルを展開しており、そのため経験値も豊富である。さらに今後を見据え、建物を50年以上維持するために必要な長期の修繕計画をしっかり策定し適宜メンテナンスを行うことを推進している。

 

メンテナンスで言うと、
・10年から15年間隔の屋上防水のメンテナンス(張替、FRP塗装など)
・EVを含めた付属設備のメンテナンス(耐用年数は種類により異なる)
・給排水メンテナンス(特に鉄管使用の場合、耐久性の高い塩ビ管に変更)
・建物定期点検(法令で定められている建物点検を毎年実施)
・15年程度を目安とした外壁メンテナンス(クラック補修、塗り替え、タイル補修など)
・表層メンテナンス(室内の壁紙、天井、床材の定期的な見直し)

 

極論、順法性(特に耐震)を担保できている建物の場合かつ、適切なメンテナンスを実施している場合、100年以上の使用が可能との見解も出ている。

 

一方、ホテルにおける会計上の耐用年数は、鉄筋コンクリート造では37年と定められているが、この期間を見直しする時期に来ているのではないか?

 

今後私たちは、資源の有効活用を通じて、スクラップ&ビルドとは一線を画した事業領域を進めていく考えである。その結果が、脱炭素社会への機運の醸成、カーボンニュートラルを通じた二酸化炭素排出量の抑制に繋がると言える。

 

文化の継承や資源の再活用には大きな意義があると考える。

■プロフィール■
氏名 
田村佳克 1973年生まれ
出身地 
京都府
(生まれは舞鶴市)
趣味 
ゴルフ、RUN、読書、ピラティス
 他
特技・特徴
早寝早起き ・ 体の柔軟性
座右の銘 
群軽折軸(ぐんけいせつじく)

※小さな力でも数が集まれば大義を為せる