代表コラム
2025.08.21
<コラム>【一蓮托生】Vol.76 地方観光における人手不足の実態①
2022年労働人口推計が6,902万人に対し、2050年予測では5,300万人と約25%減少する。
労働生産性が変わらない前提なら、人数換算で1,602万人不足するというから極めて深刻である。
先日とあるイベントで、都内の某ホテルの総支配人の方と名刺交換をする機会があった。
雑談で業界における課題や、昨今の需要動向など意見交換をしたとき、
1つ驚いた話題があった。
それは、「都内の某ホテルでは海外人財は一切登用していない」とのこと。
なぜか?と質問させて頂くと、
「都内かつ高単価のシティホテルでは日本人の応募が多すぎるため、
あえて、海外人財を登用する必要がない」とのことであった。
この現状から見えてくるのは、
東京は2050年も人手不足には陥りづらく、
その減少幅の大半が地方エリアであると考えるのが妥当だろう。
この状況が継続すれば都市部のホテル運営は安定化するが、
地方のホテル旅館はより一層苦境に立たされてくることは一目瞭然である。
少し話題を変えるが、
最近とある依頼が増えてきていることに驚いている。
それは、地方のホテル旅館から施設を「無償」で引き取ってほしいという依頼が出てきている点である。
本来、ホテル旅館や土地、建物、什器備品、人的リソースなど一定の価値評価がなされているが、
負債継承なしで「無償」というケースが数件出ているのは今年に入ってからである。
その要因を紐解いてみると
① 昨今の物価高で食材等の仕入れ価格が上昇し、採算が取れなくなってきている
② 地方の人手不足が深刻で、物理的に運営が困難になってきている
③ 単価上昇を狙ったバリューアップは、追加融資が極めて困難な状況にある(特に高齢経営者)
④ インバウンドが活況という報道とは裏腹に、地方の観光地には左程流入がない
仮に一旦施設を休業してしまうと、
→資産価値低下だけでなく廃墟化してしまい、「地域の景観保全」、「治安上の問題」が露呈してくる。
→結果、地元の名士と言われた旅館経営者が一転、当該地域で末代まで批判を浴びる可能性すらある。
察するにこの事態を回避するためには、運営を継続・発展させてくれる企業という点において当社にお声が掛かったのかもしれない。
私たちは日々このような地方の観光事業者から切実な声をダイレクトに聞く機会が多い。
これらの状況に対し、政府自治体も手を講じているがどれも短期的施策が多い印象である。
例えば、付加価値交付金などの補助金制度や、復興キャンペーンと銘打った宿泊費の補助である。
これらは一時的な需要のカンフル剤にすぎず、根本解決にはなっていない。
現在の石川県の観光市況を見れば一目瞭然である。
現在の石川県金沢エリアは、前年対比で30%程度下落しているといデータがある。
昨年復興キャンペーンと銘打って、大々的に旅行支援を行ってきた。
その旅行支援で来る客層は、エリアの魅力より安さお得感に惹かれてくる層が多いと考えられる。
ゆえにお得感がなくなると旅には訪れない。
現在の観光産業は、一部エリアと大手資本を除いて苦境に立たされている。
次号では短期的視点ではなく、長期視点で今後の観光産業の発展を考察してみたい。
(生まれは舞鶴市)
他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる
