代表コラム
2025.12.18
<コラム>【一蓮托生】Vol.84 地政学リスクから見る観光産業の未来予想図②
~需要の減退への処方箋〜
連日報道が過熱している台湾有事に対する懸念と国家間の摩擦について、このトレンドはしばらく継続するというのが業界関係者の見方である。
理由としては、高市総理の発言撤回=中国の台湾進攻を容認ともとられかねないため、発言の撤回の可能性は低く、しばらく中国からの圧力は継続するとみている。
現在中国の方に人気の国内エリアをピックアップしてみると
<中国からのツーリストに人気なスポット>
• 白川郷(岐阜)
• 清水寺(京都)
• 東京ドーム(東京)
• キャナルシティ博多(福岡)
• 東福寺(京都)
• 沖縄美ら海水族館(沖縄)
• 勝尾寺(大阪)
• ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪)
岐阜と沖縄を除いて、都市部の観光地が人気であり、その分需要減少の影響も大きい。特に大阪は万博が終了した今年10月中旬より、ホテルのADRがほぼ半減している。そこに今回の事象は大阪にとっては「泣きっ面に蜂」状態かもしれない。
大阪の中心地における年末のホテルの提供価格を調べてみると1人1泊3,000円程度から、ビジネスホテルでも6,000円程度から販売されている。この価格は万博開催中の1/3程度といえるであろう。
この需要の乱高下は、今回の中国ツーリストの減少のみならず、災害、パンデミック、風評被害、紛争などがあった場合大きな影響を受けやすい。先にも触れたが、国家主導のイベント(万博やオリンピック等)は観光需要の流れを大きく変えてしまい、開催終了後の影響は甚大であろう。
このことからも観光業はとても繊細な業種業態であることが理解できる。
業界関係者は、ある意味この需要乱高下に慣れている側面もあり、いわゆる外的要因を一事業者がコントロールすることは不可能である。
ここで重要なのは、
この外的要因や需要の乱高下に対応できる施設とそうでない施設の優勝劣敗が分かれるということ。
そのポイントを整理してみると
・償却後の利益率が20%程度確保できている点(一定以上のキャッシュフローを確保)
・一時的な借入金を含め従業員の雇用を維持できるかどうか(資金借り入れ余力の有無)
・人の異動が可能かどうか(人的資本の有効活用)
・宿泊以外の収益源を確保できているか(宿泊業以外の収益や事業が存在するか?)
こう考えてみると、どうしても大手資本が有利なのがお分かりいただけるであろう。
日本のホテル旅館経営の大半は個人経営かつ単体経営なのである。
これは、地方の観光業界が発展しえない要因の1つでもある。
現在の地方観光を分かりやすく表現するなら、
商店街に大型スーパーを建築し、商店街がシャッター街に様変わりしているのに近い印象をうける。(その結末は、町の魅力を減退させ活気が失われていく。)
このままでは、地方はどんどん廃れていく。
それを回避するためには、個人経営でも成り立つ手法や、今ある資源を活用し街を面で再生することが必要と考える。
次号では、私たちが提唱する「分散型ホテル」の可能性や課題について触れてみたい。
(生まれは舞鶴市)
他
※小さな力でも数が集まれば大義を為せる
